タコ社長がいつも以上に赤い顔をして庭に入ってきた。
右手には一升瓶が握られている。
「よぉ、さくらちゃん! 相変わらず可愛いねぇ〜。ヒック!」
「社長さんったら! ずいぶん酔ってるようね」
「いやねぇ〜、オレはまいっちゃったよ。ヒック!」
「どうしたの?」
「ウチみたいな零細の印刷工場はさぁ、何てぇのかなぁ、近代化…分かる? ップ!」
「???」
「近ごろの印刷はすべてコンピューターでさぁ。DTPとかCTPとか、ちっとも分からなくってよぉ」
「???」
「それだけじゃないんだよ。設備投資がおっつかないんだ…はぁ。ゲプッ!」
「また社長、そんなに呑んじゃ…」
「呑ませてくれよ、さくらちゃん。そりゃそ〜と、できの悪い兄貴はどこいったんだ?」
「お兄ちゃん?」
「おぉ寅ぁ〜ちゃ、ん、お〜ぃ、ど、どこにいるんだ、と、寅ぁ〜〜! 呑もう!! よ、ね」

(虎ノ門-14.05.18)

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