その辻では、武士とチンピラの睨み合いが続いていた。
「落ちぶれ果てても拙者は武士だ。誇りを傷つけられて黙っている訳にはいかない!」
「けっ、何が武士だ! 何が二本差しだ!! こちとら江戸っ子でぃ! 刀が怖くて天下の往来が、二本足で歩けるかってンでぃ」
「おのれ素っ町人、云わせておけば…勘弁ならぬ」
「おぉ? 抜くってぇのかぃ。面白れぇ、抜いてみやがれってンでぃ、このサンピン!」
侍は柄に手をかけた。
「黙れ、町人!」
「おっ、抜いたね、抜けたじゃねぇかぃお侍さんよぉ、へへ」
「驚いたか町人」
「驚いたのオドロカナイのって、刀にじゃねぇやぃ。こちとらてっきり竹光と思ってたぜ」
「先祖伝来の銘刀『備前治虫雪平』だ!」
「…雪平ってぇのは鍋じゃねぇのか?…」
「頭を下げるなら今のうちだぞ、町人」
「冗談云っちゃぁいけねぇや。頭下げるなぁテメエの方でぃ」
チンピラもイッチョマエに、短いながら刀を差している。
「売られた喧嘩だ、買ってやろうじゃねぇか!」
「ほほぅ、町人のぶんざいで武士に刀を向けるか。面白い」
「かかってきやがれ!」
チンピラはそう云っておきながら、自ら侍に切りかかった。
侍は愛刀でチンピラの刃を受けた。
“ザギ〜〜〜〜〜ン!!”

(銀座-14.05.12)

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