伴刑事は木造二階建てアパートの一室を見つめている。
犯人の潜伏先を突き止めたのだ。
そこへ若手の新米刑事が到着した。
「伴刑事!(今日は匂わない…)いよいよですね!」
「おっ、やっと来たか」
「どうします? 踏み込みますか」
「いや、待て。仲間が来るかもしれない」
「獲物は多いほどいぃ、って訳ですね」
「さんざん振り回されたからなぁ、キャツには」
「では応援を頼みましょう」
「おぅ! 署に連絡を取ってくれ」
新米刑事は携帯電話を取り出した。
頑固な伴刑事は、正直この携帯電話が好きではない。
したがって未だに持っていないのである。
署ではそんな伴刑事に困っている。
緊急の連絡が取れないのだ。
個人の感情で職務に差し支えるのもどうかと思うが…

「は、はい…伴刑事も一緒です…はい…えっ…何ですって?…分かりました」
新米刑事は携帯電話を内ポケットにしまった。
「伴刑事…」
「おぃ! 援軍を待っておれん。オレたちだけで踏み込むぞ!!」
「えっ!?」
新米刑事は当惑した。
「さぁ行くぞ!」
伴刑事は新米刑事の腕を掴み、強引に引っ張っていった。
「ば、伴刑事〜! まったくもう-」

階段を一気に掛け上がった。
「ヘソ曲署の伴だ! ドアを開けろ!!」
「ですから、ば、伴刑事!」
伴刑事はノブを捻り、反応のないドアを勢いよく引き開けた。
「観念しろ!」
さっと銃を構える。
しかし中はモヌケの殻だった。

「いない…ヤツら…」
「あ、あのぉ…伴刑事…」
伴刑事は悔しさで、新米刑事の云うことなぞ聞いちゃいない。
「あ、あのぉ…伴刑事…我々の動きが…」
伴刑事は部屋を漁り始めた。
台所、下駄箱、机の中…
そして押し入れから無線機が見つかった。
「キャツめ、こちらの動きを…」
「ですから伴刑事…」
「どうやら筒抜けだった」
「伴刑事、まったくもう!」
「野郎、いったいいつ、どこに仕掛けやがったんだ」
「はぁ?」
「盗聴マイクだよ」

(都庁前-14.06.09)

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