ムネヲちゃんとマキコちゃんは、二人だけで海水浴にやってきました。
田舎育ちの二人にとって湘南の海は、それはもう刺激的でした。
「マキコちゃん…水着…みんなとチョッと違うでちゅね」
マキコちゃんはフリルのスカートのついた赤地に水玉の水着を着ています。
「何云ってんのよ! ムネヲだって周りを見てごらんよ」
「…ホントだ…ボクだけでちゅ」
当然ムネヲちゃんはフンドシです。
しかも新潟出身のマキコにゴマをすった訳ではないでしょうが、越中の赤を締めています。
「あっ、見て見てマキコちゃん、ボクと同じような男の人がいるでちゅ」
ムネヲちゃんの指さす先には筋骨隆々の白Tバックが歩いていました。
「ちょっと違うんぢゃな〜ぃ?」
「色はチョッと違うでちゅけど…」
ムネヲちゃんの言うことには耳を貸さず、白Tバックの股間に目をやるマキコちゃんでした。
「ちょっとマキコちゃん、どこ見てるんでちゅか!」
「やだ〜、恥ずかしい」
日ごろ強気で通っているけれど、実はウブなマキコちゃんは真っ赤になりました。
ムネヲちゃんには日焼けなのか照れているのかよく分からなかったけれど…。
 ◇ ◇ ◇
「この辺にするでちゅよ」
ムネヲちゃんは砂浜にレジャーシートを広げました。
「さぁ、横になってくださ〜ぃ!」
マキコちゃんを強引に横に倒すムネヲちゃんです。
「何するのよっ!」
張り手が飛びました。
「痛っ! ひどいでちゅ〜、マキコちゃ〜ん」
「ムネヲが気安く触るからよ!」
「オイルを塗ってあげようと思ったでちゅよ〜」
「それなら早く云ってよね!」
ムネヲちゃんは横になったマキコちゃんの背中に、ココナッツの薫りのするサンオイルを塗っていきます。
ことのほか嬉しそうなムネヲちゃんです。
「上手ね〜、ムネヲ〜」
「ウフフ、気持ちいぃでちゅかぁ」
「どうでもいぃんだけどさぁ、ムネヲのその赤ちゃん言葉、何とかなんないのぉ?」
マキコちゃんからは見えませんが、ムネヲちゃんの顔はだらしなく緩みきっています。
 ◇ ◇ ◇
「気持ちいぃ…夏の海ってこんなに生暖かいのね〜」
――潮騒が耳に響いて、マキコちゃんは目を覚ましました。
「はっ、夢だったのね。アタシったらどうしよう…」
横ではムネヲちゃんが幸せそうな顔をして寝入っています。
「海に浸かって誤魔化しちゃおうっと」
マキコちゃんが立ち上がったと同時にムネヲちゃんが目を覚ましました。
「クンクン…」
ムネヲちゃんは鼻をヒクヒクさせています。
「あっ、マキコちゃん! オチッコ…漏れちったでちゅか?」

(森下-14.09.03)

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