ヘソ曲署に新人刑事が配属されてきた。
しばらくは伴刑事が面倒をみることになる。
「足手まといではありましょうが、よろしくお願いしまっす!」
挨拶が初々しい。
「うむ」
伴刑事は先輩の威厳を返事に込めた。
「しかし…その服装はなんとかならんのか」
新人は髪の毛をアニメヒーローよろしく紫のに染め、ダブダブのGパンを腰までだらしなく下げていた。
「しかし…なんなんだ、その臍の周りの輪っかは」
しかもこれでもか、とばかりにいかにも安物のヘソピアスがズラリとぶら下がっていた。
「しかし…その耳の金属はこの仕事には危ないぞ」
新人刑事の耳にはピアスがズラリと並んでいた。
それだけではない。
小鼻にまで穴が開いていた。
「しかし、ずいぶんデカいニキビの後だなぁ」
「やだなぁ先輩、これはピアスですよ」
今時の若者には、伴の精一杯の皮肉は通じなかった。
「しかし…おいおぃ、刑事に刺青はいかんぞ」
背中にはTシャツとダブGの間から青い落書きが覗いていた。
「イレズミ? やだなぁ、先輩。これはタトゥーですよ」
「しかし…なぁ」
「は?」
「しかし…そんな体じゃぁ刑事は勤まらんぞ」
伴刑事は新人の体をしげしげと睨め回した。
「しかし…貧弱だなぁ…」

(東新宿-14.07.07)

  若松河田

   
   
 新宿西口