寅は、ふたたび柴又へと帰ってきた。
だが、寅屋の敷居は思った以上に高く、そうはたやすくは跨げない。
一計を案じ、櫻を駅に呼び出すことにした。
彼女に引っ張られて渋々帰ったように振る舞うためである。

改札で待つ寅は、痺れを切らしていた。
まだあらわれないのである。
もう諦めざるを得ないか。

「妹は、こねぇ」

(箱根湯本-27.03.01)


塔ノ沢