山で暮らす重蔵の生業は、猟師である。
だが環境破壊の影響で、獲物は年々減ってきていた。
「今日もダメだったか。しかたねぇ。里へ降りるか…」
うつむき、隣りを歩く猟犬のシロに話しかけた。
「今日も里で探すしかねぇか…」

山小屋に戻った重蔵は、獲ってきたカラスを手早くさばいて金串に刺すと、囲炉裏の灰に突き立てた。
「………」
彼は無言で火を見つめる。
「………」
シロは無言で彼の顔を見つめる。
「………」
外では、連れ去られた仲間を気遣ってやって来た里のカラスが一羽、小屋の様子を無言で見つめる。

“ジュッ、ジュジュッ”
炭に炙られたカラスから脂が滴り落ち、香ばしい匂いが立ち込め始める。
重蔵は、そいつを見つめてヨダレをすすり始める。
シロは嬉しそうに、狼よろしく遠吠えをあげ始める。
外では、匂いを嗅ぎつけてカラスが鳴き始める。
それぞれの音が、山に静かに響いた。
“ジュルジュル〜”
“ガオ〜〜〜”
“カ〜〜〜〜〜”
(自由が丘-14.03.12)

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