むねヲちゃんは、ちょっとおませな小学五年生です。
彼の組には、まきコちゃんと云って、学校の勉強はできるけれどワガママでガサツで品位のない、だけど気位ばかり高くて扱いにくい女の子がいます。
でもむねヲちゃんは、そんなアクの強い彼女に片思いしていました。
土曜日の朝のことです。
むねヲちゃんは決心して、まきコちゃんに日曜日のデートを申し込みました。
まずは朝礼の時に声をかけたのですが、相手にしてくれません。
さらに休み時間、給食の時、昼休み、放課後と、執拗に口説き続けました。
まきコちゃんが帰ろうとして上履きを脱いだ時のことです。
背水の陣で挑んだむねヲちゃんに対して、ついに根負けしたのか、首を縦に振ってくれたのでした。

約束をとりつけたデートの日がやってきました。
地下鉄に乗ってやって来た神宮外苑の広い芝生に、二人が仲良く(?)向かいあっています。
むねヲちゃんは嬉しくてたまりません。
まきコちゃんに食べてもらおうと、お弁当も自分でこしらえてきました。
「これ、食べなよ。ボクが作ったンだ」
「何これ?」
「まきコちゃんは外国に行ってたことがあったでしょ。ご飯モノは好きじゃないだろうと思って…」
「ちょっと〜、それはイィけど掴めないじゃないのぉ!」
「あれ? 具を挟み過ぎちゃったンだなぁ。エヘヘ、でも食べごたえあるでしょ、エヘエヘ…」
むねヲちゃんは精一杯の愛想笑いを浮かべています。
まきコちゃんは腹立たしげにむねヲちゃんを睨みつけました。
「まったく、なんて重てぇサンドなのよぉ」
(表参道-14.04.03)

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