山佐家の朝がやってきた。
台所には、朝餉の仕度で慌しくお香香(こうこ)を切る母親の姿があった。
食卓では、父親が床の間を背に陣取り、新聞を広げている。
母親は台所での仕事が終わり、食卓に惣菜を並べ始めた。
キッコがようやく着替えを終え、階段をドタドタと音をたてて降りてきた。
「キッコ、階段はもっと静かに降りなさい! 女の子なんだから!!」
「何で女の子を持ち出すんだよぉ! チェッ!!」
キッコは面白くない。
「朝ご飯な〜に〜?」
「朝は納豆と決まってる」
父親が憮然と横槍を入れた。
「あ〜ぁ、また納豆か…」
「文句を云わずに喰わんか」
「は〜ぃ、いっただきま〜っす」
「うむ」
「“ズルズル”…ねぇお母さん、今日の御御御付(おみおつけ)ヘンな味だよぉ〜」
(作者注:味噌汁のことを東日本の多くは「おみおつけ」あるいは「おつけ」と云う)
「あらそう?“ズルズル”…あぁ、煮干使ったからだわね」
「えっっっ、煮干ダシ?」

(日本橋-14.05.31)

「美味しくな〜ぃ!」

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