殺気立っている。
射幸心を抑えきれない男たちの人いきれでむせ返りそうだ。
振られた壺が伏せられる。
男たちの視線が刺さった。
静まり返る。
男たちの息が止まる。
賽の目も変わろうか、という気迫が猛然と湧き上がる。
親からもらった名前が賽太郎である。
無類の博打好きであることは云うまでもない。
既に始まって小半時はたとうとしている鉄火場に乗り込んできた。
賽太郎はいきなり張ることはない。
まずは場の空気を読む。
これも親から仕込まれた博打の技と云えるか。
壺が開かれた。
男たちの舌打ちと小さな安堵が広がる。
賽太郎は呟いた。
「いきなり丁か…」
(稲荷町-14.05.03)
渋谷方面
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