竜宮城ではオトヒメさま主催によるタロウさん歓迎レセプションが盛大に開かれていた。
鯛は質実剛健「勧進帳」の弁慶を演じた。
平目はしなやかな魚体を生かして扇の舞を魅せた。
小さな鰯も衆を頼んで見事なマスゲームを展開している。
烏賊はダーツとなって的へ向かって飛んでいる。
蛸は風船売っている。
これといって芸のない伊勢海老は尻込みしていたが、意を決したのか、切腹して俎板の上に載り、身を挺してタロウさんをもてなした。
狂喜乱舞の宴は、尽きることがない。

「おい、あそこにいるのは…」
「あぁ、アイツはこれと云った芸もないしな…」
「伊勢海老みたいに自分を切り刻んで俎板の上に載る、なんて度胸もないからなぁ」
「でも…鍋なんか用意してるわよ」
「どうする気かしら?」
「おぉ、鍋を火にかけてるぜ」
「煮立った鍋に飛び込もうとしているよ」
「五右衛門でも演じるのかぁ」
「ねぇ誰か止めてよ」
「無茶するなぁ」
「どうやら本気みたいよ」
「そうよそうよ」
「ちょと誰か止めて!」
「ヤツは本気だ!」
「止めろ止めろ!」
「きゃ〜〜〜〜〜〜!!」
「鱈はマジだわ!!」

(田原町-14.05.18)

作者解説
「マジ」とは『真面目』を省略した若者言葉である。

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