油蝉が暑苦しく鳴いている。
大きな真夏の太陽が容赦なく照りつけている。
伴刑事はうだるような暑さの中、張り込み続けて今日で四日目だ。
何を追ってるって?
そりゃも〜、
「星よーーー!!」

と、それはともかく、張り込みである。
伴の部下がアンパンと牛乳を持ってやってきた。
部下である若手刑事は、ほんの一瞬だが顔をしかめた。
「伴刑事、もういぃ加減で交代しましょうよ」
「いいや、コイツだけはオレの手でしょっ引く!」
「だってもう四日目ですよぉ」
「それがどうした」
「伴刑事も体力の限界…」
「オレを誰だと思ってるんだ!」
「そ、それは、元…」
「分かってるんだったらそれ以上云うな!」
「でも…」
伴刑事は若手刑事からアンパンと牛乳をむしりとった。
「アグアグ…」
アンパン一個を一気に口へ放り込んだ。
「伴刑事、無茶するなぁ…」
若手刑事はあきらめて、張り込み現場を急いで後にした。

電柱の陰に、伴刑事と若手刑事の上司の姿があった。
「どうだった?」
上司は走ってきた若手に尋ねる。
「ハァハァ…ダメっす」
若手は息苦しそうだ。
「アイツも頑固だからなぁ」
「ハァハァ…もう堪んないっすよ〜」
「どうした?」
「伴刑事…ハァハァ…」
若手は呼吸を整えようとしている。
「苦しいのか?」
「い、いぇ、伴刑事…もう汗臭っ!!」

(浅草-14.05.26)

  渋谷方面