【『家政婦は見抜かれた』前篇】
「エツコさん! 昨日の約束、アレは嘘だったんでしょ、そうでしょ!!」
「そ、そんなことはないわ…ワタシを信じて」
「聞き飽きたわ、エツコさんのそのセリフ」
「今度こそ本気なの! ワタシ、決心したのよ」
「いったい何を決心したの?」
「あなたと一緒に…」
「そんな口約束なんて信じられるものですか」
「疑り深いのね」
「だって、食事の仕度から掃除、洗濯、下の世話まで、散々こき使われてきたんですもの、そんな口約束は信じられないわ」
「どうしたら信じてもらえるの?」
「言葉じゃダメ」
「行動で、ってこと?」
「そうよ、態度で示してくださらない?」
「ならばこれでいかが?」
「はっ、それは…」
「これでワタシのことを――」
「……」
「どうしたの? 急に泣き出したりして」
「ごめんなさい…疑ったりなんかして…」
「いぃのよ。これまでたくさん迷惑かけたから。泣かせもしたわ。でも今日までよ」
「ウルウル……」
「どうしたの? まだ何か胸につっかえていることがあるの?」
「いえ、ただ…」
「ただ?」
「ただ…こんなにいっぺんに…」
「いっぺんに?」
「幸せになって…」
「幸せになって?」
「いぃのかしら?」
「いぃのかしら…」

【後篇へ続く…】

(井の頭公園-15.05.03)

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