昔々あるところに、それはそれは大富豪がおったそうな。
そのご当主、たいそうアチラがお好きらしい。
何しろ避妊具などなかった時代、生ませた分身は12人とか。
奥方だけではあきたらず、お妾さんを抱えること12人。
そのそれぞれにまた子供を生ませておりまして、いやはや豪儀なものです。
好きは好きでも下手の横好き。
しかも絶倫ときてますから、ヤッコさんはのべつ幕なし捌け口が欲しい。
時には女中さん、年増の後家さん、家の前の通行人、銘酒屋さん、はては陰間まで。
前から後ろから右から左から、なんでもござれでございました。
吉原だってもちろん通います。
花魁にもその下半身の履歴はつとに知れ渡っておりまして……
相方は誰でもが皆、そのご隠居に云ったそうな。

「もうかないませぬ。ほんに、ほんに、ぬし、艶福家〜」

(西永福-15.08.16)

浜田山


永福町