「は! あの後姿は…何でこんなところで…」
マキコちゃん、いきなりの遭遇で動転しています。
気配を察知したムネヲちゃんが振り返りました。
「ハ〜ィ! マッキ〜!!」
「誰よ、マッキ〜って?」
右手を差し出すムネヲちゃんです。
「ちょっと、何のマネよ!」
「ナ、ナ、ナイスチュ〜、ミ〜チュ〜!」
またもや口を突き出すムネヲちゃんです。
「何よチュ〜チュ〜って、またキスが上手だとかなんとか云うつもりぃ?」
「ノ〜ゥ!」
ムネヲちゃんは、肩をすくめて両腕を大げさに持ち上げました。
「バカじゃなぃ、ムネヲ! アメリカ人のつもり?」
「ユ〜ア〜、プリチィ〜! ユ〜ア〜、ビュ〜チフル!!」
「ムネヲ〜、日本語もおぼつかないヤツが何ヘンな英語使ってるのよぉ」
「これからの日本人には英語は必須でちゅ」
「そ、それは、アタシもそう思うけどぉ」
「マキコちゃんは留学の経験もあるから英語、得意でちゅよね」
「まぁ、少しなら…」
「ボクに英語、教えてくだちゃい!」
「英語教えて、って云われても…何から知りたいのよぉ」
ムネヲちゃんは襷がけにした幼稚園バッグから一冊の問題集を取り出しました。
「これ!」
「…『これだけ話せれば貴方もアメリカ人』…何それ?」
「さっき買ってきたんでちゅ」
「へへ〜〜!」
「ここからボクに出題してくだちゃい」
「出題って?」
「日本語が書いてあるでちゅ」
「あ? あぁ、あるわね」
「読んでくだちゃい」
「問題1、次の日本語を英語に訳しなさい」
「それは分かってますから!」
「何だよムネヲ! お前が読んでくれっていうから読んだんじゃないのぉ」
「その次でちゅよ〜」
「何よ偉そうに! 手伝ってやらないわよ!!」
「そんなぁ、マキコちゅぁぁぁぁぁ〜ん」
シナをつくってもたれかかろうとするムネヲちゃんです。
「気持ち悪い! アタシを中心として半径3m以内に入らないでちょうだい!」
「ムフフフフ〜」
「ぁ〜もう、何だか悪寒がするわ」
マキコちゃんの腕は、くまなく鳥肌が立っています。
「何ブツブツ云ってるんでちゅか? 早く読んでくだちゃい」
「分かったわよ。もう…ン? これ? 何だかヘンな問題ねぇ…」
問題に首をかしげるマキコちゃんです。
「こんなんでいぃのぉ? 『彼は海へ行く。それは良い選択だ』…はい、これは?」
「ヒ、ヒ、ヒ〜ヒ〜…」

「ウプッ! ヒヒジジィって云いたいのかしら?」
「マッキー!」
「アハ、ゴメンゴメン! 今日のムネヲは珍しく真面目なのかしらん」

「ヒ〜、ゴ〜…
He go sea,much better!

 …どう? 合ってるぅ?」

「ヒ〜ゴ〜シ〜、マッチベラ〜???? ムネヲ…やっぱり何か、ヘンだわねぇ」

(東松原-15.07.01)

明大前


新代田