浩「オッカァ、それにスても、腹減ったどー」
母「もう少しのスン抱だ。我慢してけろ」
清「……」
浩「キヨス兄ちゃんは腹減らネか?」
清「……」
母「キヨスは相変わらず、よけいなこと云わネな。ヒロスも見習え」
浩「えぇー? これからの日本人は、もっとズ己酋長ってなもんをしていかネといかネって、センセが云ってたド」
母「なんだ、その自己酋長ってのは」
清「それは自己主張だっぺ」
母「おゃ、キヨスがズ己ス張ぶっぱじめたべ」
浩「オッカァ、キヨス兄ちゃんの云ったのは、ズ己ス張でねくて、ズ己酋長だっぺよぉ」
母「どこが違うだ?」
清「だから二人とも間違ってるズラよ。オラの云ったのは、自己主張だって」
母「まぁ、当たらずと云えども遠からず、ってなぁ」
浩「オラたち、やっぱり家族だべなぁ。言葉が間ツがってても、ちゃんと意味は通じとる」
母「ンだべなぁ」
清「オッカァ、あすこに富士そばって店があるド」
母「へぇー。きっと富士山みてぇに日本で一番ンめぇ蕎麦なンじゃろなぁ」
浩「ねぇ、入ろうよぉ。お腹減っちまって、オラ歩けねぇ」
母「スっかたなかんべなぁ」
 ◆ ◆ ◆
浩「オラ、かき揚げ蕎麦!」
母「ンだばオラは月見蕎麦にすンべぇ。キヨスは何するダ?」
清「オラはコロッケ蕎麦ダ」
浩「キヨス兄ちゃん、変わったもん喰うンだっぺナァ」
母「好きなもん、喰ったらエェだヨ。それこそ、ほれ、さっき云っとったズ己ス張ってヤツだべ」
清「テンクウバシも好き好きだ」
母「な、なんだ? キヨス」
浩「分かったよ、オッカァ。この店、割り箸と色の塗ってある箸と選べるンだベ」
母「それがどースたって」
浩「天ぷらを喰う箸は、好きなほうを選べっツってンだっぺ」
母「ホントか、キヨス」
清「ンだ」

   『了』

(天空橋-24.04.02)

 穴守稲荷
 
 
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