箱根登山小学校4年2組は、国語の時間です。
担任の湯本先生が、教壇に立って漢字を教えています。
「大平台は、縦書きにするとシンメトリーである」
「先生、どういうことですか」
「表から読んでも大平台、裏から読んでも大平台ってことだ」
「ホントだぁ」
「ほかには、シンメトリーの駅名はないかな?」
子どもたちに、シンメトリーの意味は通じたのだろうか。
それはともかく、授業は続く。
「東京!」
「ほほぉ。意外に有名なところで見つかったな」
「西東京!」
「東東京!」
「南東京!」
「おいおぃ、それは調子に乗り過ぎってものだ」
「アハハハハ」
教室の空気は、たちまち和んだ。
「駅名だけでは難しいから、固有名詞と範囲を広げて探してみようか」
「先生!『中田中(なかたなか)』なんてどうでしょう」
「おいおぃ、それはひとの名前か?」
「はい!」
「“さん”くらいはつけような」
「はーぃ」
先生は黒板に、白いチョークを使って中・田・中と書いた。
「日本のどこかにいらっしゃりそうだが、その場合『なかたあたる』さんと読むかもしれん」
「先生! 横書きでもシンメトリーですね」
「うむ、確かに。どことなく縁起が良さそうな名前だ」
「先生!『中口中(ちゅうくちなか)』さんも」
中田中の名前の隣に、中・口・中と書き足した。
「『なかくちあたる』さんか。うむ。ほかには」
「先生!『田口田(たくちた)』さん!!」
「ほほぉ。『たぐちでん』さんか」
箱根登山小学校4年2組の国語の時間は、終わりそうにありません......

(大平台-27.03.09)

  塔ノ沢
   
   
  宮ノ下