近ごろ、我が家の若旦ニャの様子がおかしい。
戀の季節だから、なのだろうか。
だが、気の毒だったが、早々に男を捨てさせてしまった。
異性への思いなど、あろうはずもない。

そろそろ日が陰ってきた。
世俗に云う逢魔が時、窓外を眺めて黄昏ている。
変身でもするのであろうか。
明かり用の灯し油を舐めようにも、我が家に行燈などあろうはずもない。
鰯油はないが、料理用の胡麻油でもやってみるか。
右の掌に、油を落とした。

ピチャピチャピチャ......

美味いか?

「ンミャァ」

ん?
いや、気のせいだ。
そんな駄洒落など、云うはずはなかろう。

「ンミャァ」

いや、確かに聞こえた。
舐めるのをやめないと云うことは......

「ンミャァ」

そうかそうか。
ふふ、掌がムズムズしてきたぞ。

「ンミャァ」

ミャァの舌が、わたしの掌に官能を与える。

(宮ノ下-27.03.10)

  大平台
   
   
  小涌谷