濱課長は洋子を連れ立ってインド料理店にやってきた。
分かりもしないメニューブックから知ったかブリしてあれこれ注文している。
「課長、インド料理にお詳しいんですね」
「まぁな」
おだてると、ますます増長する濱である。
「アジア各国の料理もご存じなんですか?」
「何でも訊いてぇな」
「中でもどこの国の料理がお好きですかぁ?」
「ベトナムなんかは旧宗主国のフランスの文化が根強く残っているから料理も美味いでぇ」
そうこうしているうちに注文の皿が中年のインド人給仕によって運ばれてきた。
洋子はてっきりカレーが運ばれてくるのかと思っていた。
しかし皿の上には見たこともない素材が載っていた。
「え〜!? すっごくスパイシー!」
「そやろ!!」
「これってどうやって食べるんですかぁ」
と訊かれても、本心は困ってしまう濱である。
彼が知っているインド料理と云ったら、カレーライスとカレーウドンくらいだった。
濱は食べ方を探るために周りの客をさりげなく見渡す。
「(そや…料理の順番がちごうとるんや)」
「課長? どうされたんですか?」
「ん? 独り言や」
濱は手を上げて給仕のインド人を呼びつけた。
「おっちゃ〜、皆みぃ! ナンがさきや!!」

(落合南長崎-14.10.06)

  新江古田

   
   
   中 井