伴刑事は受話器を鷲つかみにして右手でダイヤルを回した。
「あぁオレだ。どうだ、日本の状況は」
伴刑事はICPOの会議に出席するためにフランス入りしていた。
「え? あぁ、パリの空はどんよりしてどうも性に合わんな」
目をショボつかせている。
「時差? そんなもん、ある訳ないだろ! 気合だ、気合!!」
一通りの業務連絡を済ますと受話器を勢いよくおいた。
「ふ、ふぁぁぁぁぁ…」
電話では強がっていたが、結局睡魔には勝てない。
再び受話器をつかむとフロントを呼び出した。
「日本語の分かるスタッフを頼む」
電話の向こうでまくしたてている。
「日本語だよ、日本語! ジャパニーズだ!!」
電話のこちらもイラついている。
「オデンワヲカワリマシタ、ムッシュ」
「何だ、居るんぢゃないか」
「ハイ、ムッシュ」
「チッ! さっさと出ろよ」
「モウシワケアリマセン、ムッシュ」
「悪いが明日の朝、六時に起こしてくれないか」
「ロクジデスネ、ムッシュ」
「そう、シックスアクラックだ」
「カシコマリマシタ、ムッシュ」

……ZZZ……

「誰だ、オレの眠りを覚まさせるのは」
「オハヨウゴザイマス、ムッシュ」
「ん? 何者だ」
「アサデス、ムッシュ」
「何だってぇ〜?」
「アサデスヨ! オキテクダサイ」
「うるさい!」
「ム〜ッシュ! アサデス、アサ! アサ、ムッシュ・バン!」

(麻布十番-14.11.23)

  六本木

   
   
  赤羽橋