朝礼台に立つムネヲちゃんは誇らしげです。
ミキハウスのブレザーの襟には、
立派な生徒会委員のバッジが光っています。

「ムフフ、ボクはとうとう帰ってきまチた!」

「は、アイツ…どうして」
トイレの窓からそ〜っと様子を伺うのは、
ムネヲちゃんの唯一無二のガールフレンド、
そうマキコちゃんです。

「どうしてまたアタシの目の前に現れるの?」

「皆さん、ボクが帰ってきたからには、
もう校長先生たちの好きにはさせまチェん!」

湧く生徒たち。

「今こそ独立の時です!
生徒諸君、立ち上がろうではありまチェんか!!」

「アイツ、ずいぶん自信をつけたなぁ」

朝礼台に立つムネヲちゃんを、
眩しそうに見つめるマキコちゃんです。

「ん? ボクに対するこの激しい愛のこもった視線は…」

ムネヲちゃん、マキコちゃんに見られている気配を感じたようです。

「マキコちゃ〜〜〜〜ん!!」

朝礼台を飛び下りると、
マキコちゃんの入っているトイレへ猛然と駆けるのでした。

「ハァハァ…マキコちゃん!
見て、聴いてくれていたんでチュね」

トイレの窓に嵌められた桟にしがみつき、
口をニュ〜と突き出すムネヲちゃんです。

「ちょっと、ココを何処だと思ってるのよ。
女子トイレよ」
「でチュね、でチュね。
♪でチュね入船港町〜」
「何なのそれ、誰の歌よ」
「ボ、ボクのアドリブでチュ。
ア、ドリブターズの全員集合!
なんチュって、デヘヘ」
「どうしようもなくツマラナイなぁ、ムネヲは」
「いぃんでチュ、マキコちゃんにウケれば」
「ウケてないわよ」
「で、でもそうやって言葉を返してくれてるって、
ボ、ボクのギャグセンスに一目置いてるってことでチュよね」
「何がギャグなのよ」
「ボクね、塀の中に閉じ込められている時にね、
いっぱいギャグをチュくったの」
「ギャグをねぇ…」
「ムネヲのギャグシュウ(ギャグ集≒逆襲)!」
「???」

呆れ果てるマキコちゃんです。

「ガハガハガハッ!」

一方、お構いなしに自分でウケるムネヲちゃんです。

「いったい何時出所してきたのよ」
「ムフ、知りたいでチュか?」
「別に〜。知りたくなんか…」
「♪あ〜なたの〜 過去など〜」

歌い始めるムネヲちゃんです。

「だから知――」
「シッ!」
「どうしたのよっ!」
「シッシッ!!」
「シィシィシィシィって、爪楊枝銜えたみたいに――」
「シィは待ってくだちゃい!! 
やっとできた! 2年ぶり〜、アハハのハ〜ッ! マキコちゅぁ〜ん、ど、どうだったぁ?」
「フンッ! 髪の毛と同じで相変わらずコクがないわ」

(柴又-18.01.25)

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